”幸福男子(ラッキーくん)”:高口里純
- 幸運男子(1) (高口組 BL系)
- クリーク・アンド・リバー社
- 2014-11-14
- Kindle本
BLなんて、これまで読んだことないと思っていたけれど、「もしかしたら、あの時読んだあれは実はBLはこちらだったのでは?」と思い至り、改めてkindleでダウンロードして読んでみました。
(便利な時代になったものです。本屋に注文などしなくったって、Kindleで一瞬でダウンロードできてしまうんですから)
やはり、正真正銘のBLでした。
連載当時にちらっと立ち読みしたような記憶があったのですが、その当時は「カッコいい男のコのお話」ぐらいで深く考えず流してしまいました。
時代は1990年代のはじめであり、まだBLというジャンルもはっきり確立されていなかったのではないかと思います。
むしろ「やおい」とか言われていた頃?
はっきりとセックスしているシーンもなく、ストーリーは
男(しかも義理の兄弟)に惹かれてしまったけど、どうしよう?
どうしたらいい?
どうなっちゃうの?
という葛藤が主であり、1990年の連載当時にはいわゆるセックスにまでは至っていません。
実際にセックスが描かれたのはかなり時間を置いて、1999年あたりに描かれた番外編の3巻以降です。
1990年当時は、インターネットがまだ普及していませんでしたので、ゲイが具体的にどういうセックスをするのかをリサーチすることも、ままならなかったことでしょう。
私自身、当時はアパレル業界にいましたし、ナイトクラブにも通っていたためゲイの知り合いはかなりいましたが、どういったセックスをしているのかまでは知りませんでした。
(何となくアナルセックス?ぐらいのぼんやりした知識のみ)
思えばインターネット普及以降、作家さんのリサーチ力も大幅に上がったはずで、作画においても、人物の作り込みにおいても、マンガの描かれ方は格段にリアリティーが増した気がします。
高口里純といえば、”花のあすか組!”にハマって以来、その後のマンガはしばらくの間ほとんど読んでいました。
絵柄が好きで、この方の描く男性がとにかくカッコいいのです。
基本、皆同じ顔です。
つり目の、どちらかといえば馬面。
実写にするなら、若い頃の長瀬智也みたいな。
特に、”ロンタイBaby”の二神堂 緋郎(ニガミドウ ヒロウ)なんて、連載当時惚れ惚れしてました。
あと、”EX-MEN訊いて”のマーメイドとか。
BLの定石として、
無表情で心を閉ざした美少年」の心を「社交的でモテるノンケの男(つまり、普通に男として魅力がある)」が何故か惚れ込んでしまい→口説き落とす。→そしてセックスする。
というのがあると思いますが、この作品ではその過程がとても上手く描かれています。
この作品では、社交的でモテているノンケの男、”斑(むら)”が、無表情で心を閉ざした美少年、”すばる”になんとなくキスしてしまったことをキッカケに惹かれていき、斑がすばるを口説く形で進んでいきます。
高校生の男同士が、「なんとなく」「身長差がちょうどいいから」「その場のノリで」キスなんか、しないでしょう。普通は。
けど、お互いの容姿が美しいことが「オトコ同士でキモ(ち悪い)!」というハードルを超えさせちゃうのでしょうか。
キスしてしまったことに葛藤する斑ですが、割と早い時点で気持ちを切り替え、自分の気持ちや衝動に戸惑いながらも、すばるをどんどん攻めていきます。
一方、すばるはもともとゲイだったようです。
一応最初の頃は女の子と付き合ってはいますが、それほど思い入れがあったようには見えません。
むしろ、言い寄られてなんとなく付き合ってしまっていたようで、斑との関係が始まると、あっさりと女の子の方はやめてしまっています。
BLの最大の難関は、ハッピーエンドに持っていきずらいことで、ハッピーなBLカップルの日常は、今日では”昨日何食べた?”などで描かれていますが、これは LGBTQの認知度が社会的にこの20年でかなり高まったからこそ、なのでしょう。
そして、この作品の最後は最悪です。
なんと、やっと大学受験を終えて一緒に住める?というところで、すばるが交通事故で死んでしまい、数年後の斑が大人になって孤独に生きているというところで終わります。
正直、「連載当時読んでなくてよかった〜」と思いました。
これはトラウマになるでしょう。
今でも、2巻のこの最後の部分は読みたくないです。
落としすぎじゃないでしょうか。
連載当時のファンはさぞかし辛かったことでしょう。
まあ、「結ばれて以降は未来永劫幸せに暮らしましたとさ」と言う終わり方は難しかったんでしょうね。
今よりゲイに偏見も強かったでしょうから、ゲイカップルが普通に幸せに付き合っている、と言う状態も想像しずらかったでしょうし。
そんな罪滅ぼしとでもいうのか、1999年に3巻に当たる部分の番外編を発表されています。
時間軸を少し戻して、斑とすばるが実際に結ばれるまでのエピソードが描かれています。
ファンとしては、一番オイシイ部分をやっと貰えたといったところだったのでしょう。
唯一不満なのは、10年近くが経過するうちに、作者の絵柄が微妙に変化してしまったことです。
大抵の作家さんは、ある時点まで作画の能力はどんどん向上していきます。
高口里純さんの場合、1990年代はじめのあたりがピークだったのではないでしょうか。
3巻での絵柄は、かつての「ゾクゾクするような」いい男の表情ではなくなってしまっているんですよね。
「絵が老ける」とでもいうのでしょうか。
こればかりは、どうしようもないことなのでしょうが。
こういった、「絵柄が老けてしまって残念問題」は、大御所作家さんがかなり時間をおいて続編や番外編を描くときに、必ずといって良いほど起こります。
池田理代子さんの”ベルサイユのばら”の番外編とかね。
往年のファンとしては、続きが読めて嬉しい反面、「これは私の〇〇(キャラクター名)じゃない!」と、複雑な気分になります。
- 幸運男子(3) (高口組 BL系)
- クリーク・アンド・リバー社
- 2014-11-14
- Kindle本
とはいえ、やはり二人が結ばれるところはグッときます。
時代は1999年ですから、インターネットは普及し、ゲイのセックスライフもシークレットではなくなったためか、斑とすばるは遂にガッツリセックスしてます。
それにしても、この作品が書かれた頃はまだBLという言葉はなかったですし、さらに「腐女子」という言葉もありませんでした。
しかし、斑の彼女の「ヒナちゃん」はいわゆる腐女子なんですよね。
斑とすばるのツーショットに萌えるあたりや、色々なリアクションが腐女子そのもの。
ヒナちゃんはヤキモチを焼くどころか、二人の関係を応援すらしています。
そのせいか、女性キャラとしてヒナちゃんはあまりジャマじゃないですね。
そして、BLといえばツンデレ。
コレが一番グっときたシーンです。
それにしても、何でBLって何度も読み返してしまうんでしょうか。
中毒性高いです。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。